社外取締役座談会
変化の激しい環境下において、議論の質と深みが増した取締役会
2025年度を振り返り、取締役会での議論の変化と現経営陣への評価をお聞かせください
- 秋吉
- 2025年度は外部環境の変化だけでなく、横浜フィナンシャルグループにおいても変化の多い1年間でした。2025年4月にはL&Fアセットファイナンスの株式を取得、2026年1月にはMILIZEを持分法適用関連会社化、2026年3月には三井住友トラスト・パナソニックファイナンスの株式取得に関する基本合意書を締結しました。グループ会社の数が増え事業も拡大するなか、監査等委員会設置会社に移行した新たな体制のもと、取締役会ではグループ全体のガバナンスを意識し、先を見据えた議論をしてきました。企業価値向上に向けたテーマをしっかりと選定し、深い議論をすることができたと評価しています。
- 依田
- 監査等委員会設置会社に移行する以前から監査役が積極的に意見を述べていましたので、大きな変化があったわけではありませんが、モニタリング型へ段階的に移行していくことを意識しつつ議論を進めました。また、執行側から提供される情報の質はさらに向上したと感じています。事業ポートフォリオを最適なものにしようという執行側の思いの表れであると受け止めています。
- 石井
- 2025年度はさまざまな点で「転換期」でした。提供される情報の質に加えて、議論の質という観点においても変化を感じています。特に、新たな事業領域に手を広げようとする際に、戦略的投資の目的や資本効率について深く議論をすることができました。経営陣の実行力は着実に高まっていると評価しています。
- 秋吉
- グループ全体を俯瞰した適切なガバナンス体制の構築を進めていますが、今後は、持株会社と傘下の子会社との機能を明確化し、それぞれが何をどのように担うのかという点を整理していく必要があります。ただ、持株会社と子会社との現場との距離が離れてしまうことも考えられるため、現場の意見を吸い上げ、ガバナンスへつなげる仕組みづくりの検討を重ねていかなければならないと考えています。
中期経営計画初年度の成果と、注力すべき課題
中期経営計画初年度における成果と課題をお聞かせください。
- 秋吉
- 市場金利の上昇という環境変化を業績に取り込むことができています。これは事業ポートフォリオの構築が進んだことによるものと感じています。一方で、課題は預金獲得です。粘着性のある預金を十分には獲得できていません。若年層の預金口座をいかにして獲得し、そのうえで預金残高をどのように増やしていくかという点は、当社グループが今後さらに成長するための課題です。
- 依田
- 業績以外の観点で申し上げると、人財育成はまだ道半ばであると感じています。人財育成はソリューション・カンパニーをめざすにあたり、欠かすことのできない要素の一つです。「量」である営業人員数は確保の目途がつきましたが、「質」である人財育成については、より一層注力していく必要があります。
- 石井
- グループがめざす方向性を、経営陣が現場にしっかりと落とし込むことで、実行力が向上しているように感じています。例えば、案件ごとの収益性に対する意識が一層高まっているほか、実行した戦略的投資案件も当社グループの戦略に沿ったものになっているなど、1年間という短い期間であっても成果は着実に出ています。課題は専門人財の育成です。金融の高度化が進む環境下においては、他社に負けない専門性の高い人財を育成・確保する必要がありますが、まだ十分には対応できていないと感じています。
報酬・人事委員会の価値とサクセッションプラン
報酬・人事委員会における議論状況やサクセッションプランにおける取り組みを教えてください。
- 秋吉
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報酬・人事委員会において、2024年度に8か月という時間をかけて議論を重ね、役員報酬の体系を見直し、報酬水準を「トップ地域金融グループ」にふさわしいものとすることができました。株主と同じ目線に立って経営できるようにという思いから、インセンティブ報酬の割合を増やしました。グループ会社が増えていく中で、グループとしてどのような報酬体系とすべきなのかという点は、今後議論を深めていく必要があります。
2025年度のサクセッションプランに関しては、19名の対象者と面談をおこないました。2024年度よりは人数が少ないですが、一人ひとりに時間を掛けて面談することで、対象者の方々のもつ問題意識を深く理解することができたほか、私たち社外取締役にとっても現場の考えに触れる貴重な機会となっています。

- 石井
- 報酬体系については、銀行業はアセットビジネスであるため、固定報酬のウェイトが高くてよいのではないかとの意見もあると思います。しかし、継続的かつ健全に収益力を向上させて、企業価値を高めていく必要があるなか、株式報酬割合を引き上げることで株主との利益をより一致させていくことが重要であると考えました。
- 秋吉
- 報酬・人事委員会の最大の使命は代表者の交代・継続に責任を持つという点にあります。新たな取締役候補と面談をするのと同時に、現経営陣との継続的な面談も重要だと考えています。現状の経営体制が機能しているか、そして、今後も継続すべきなのかという判断を、真摯におこなっていかなければなりません。
従業員との対話を通じた「企業価値向上に向けた取り組み」の実践
2023年5月の公表から3年以上が経過した「企業価値向上に向けた取り組み」について、ロジックツリーに掲げた内容の「実践」という視点から、現時点での評価をお聞かせください。
- 秋吉
- ロジックツリーによって、従業員一人ひとりの業務がどのように企業価値の向上に貢献するのかという点を可視化することができました。これにより、「企業価値向上は経営陣の仕事ではなく、従業員一人ひとりの役目であると認識されるようになりました。何をすれば企業価値が向上するのかということを、自ら考え、行動することが成果に繋がります。企業価値の向上に向けた、従業員一人ひとりの行動変容も、業績の押し上げに寄与していると評価しています。
- 依田
- 企業価値の向上に向けては、管理役職者がそれぞれの業務と照らし合わせて、部下と対話を重ねることが重要です。毎年、企業価値向上に向けた取り組みに関する説明会を全従業員向けにおこなっていますが、サクセッション面談や支店訪問を通じて、管理役職者に企業価値向上への意識が浸透してきていることを感じます。また、生産性向上に向けた取り組みも印象的です。それぞれの管理役職者の権限において主体的に業務を見直し、より重要なことにフォーカスできるようにする動きが始まっていると感じます。
- 石井
- 当社グループには地域に貢献しようという意欲が高く、能力も高い人財が揃っています。人財のもつ能力を最大限発揮できるよう、生産性向上を進めることが重要であり、それが企業価値向上につながると考えています。
企業価値向上に向けた取り組みを形骸化させないために必要なことは何でしょうか。
- 秋吉
- 企業価値向上に向けた取り組みにゴールはありません。常に成長し続けていく必要があり、やるべきことはまだたくさんあります。神奈川県における預貸金シェアはNo.1ですが、圧倒的なNo.1ではありません。神奈川県内でもまだ成長する余地があります。全員が「やれることはまだまだある」という思いをもって活動すれば、企業価値をさらに高めることができると考えています。
- 依田
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取り組みを形骸化させないためには、当社グループが長期的に何をめざしているかという点を、常に意識し続けることが重要です。地域のために金融プロとして何ができるのかを考え、行動し続けることが大切です。
また、自分たちが達成したことを祝福する文化も大切です。できたことを皆で共有し、喜び合うことが自信につながり、次の挑戦への活力になると思います。
- 石井
- 経営レベルでは多様なエンティティを入れ、多様な機能を獲得していくことが重要ですが、現場レベルではお客さまから感謝される経験を増やしていくということが重要です。従業員それぞれが「取り組んできたことが正しかった」と実感できるような仕組みづくりを進める必要があります。自身の行動が企業価値の向上に貢献しているという実感の積み重ねが、企業価値をさらに高める原動力となります。
長期ビジョンの実現に向けて、さらに伸ばすべき強みと取り組むべき課題
長期ビジョンとして「地域密着の都市型総合金融グループ」を掲げ、中長期的にめざすROE水準として12%以上を見据えています。その実現に向けて、さらに伸ばすべき強みと、不足している点についてお考えをお聞かせください。
- 秋吉
- 神奈川・東京において圧倒的なプレゼンスを発揮していかなければなりません。そのために、リレーション、ソリューション、デジタライゼーションの3軸で戦略的投資を進めています。営業人員を増やし、お客さまとの接点を強化したことで、課題解決に資するソリューション提供は順調に拡大しています。また、生成AI等も活用し、業務プロセスのデジタル化・効率化を進めていくことも必要です。デジタライゼーションについては、まだ十分ではなく、一層スピードを上げて取り組まなければなりません。ソリューションの観点では、投資を通じて銀行にはない機能を有した企業を獲得することも選択肢の一つです。やるべきことはたくさんあり、伸びしろは大きいと考えています。

- 石井
- 生成AIの活用においては活用の裾野を広げることと、「最先端のものに挑戦し続けること」の2点が重要です。生成AIはもはや特殊な技術ではありません。基礎リテラシーにするとともに、長い歴史のなかで蓄積してきたノウハウをもとに、当社グループにしかない生成AIの活用方法を作り出すことが重要です。
- 依田
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課題としては人財育成が挙げられますが、審査部門への短期トレーニー制度など、成長するための環境整備は着実に進んでいます。
ただ、金融知識の習得には一定の時間を要するため、日々の業務の生産性を高め、学習の時間をより確保することが必要です。そして、育った人財のリテンションも重要です。そのために、やりがいのある職場づくりを進めることや、長期ビジョンと照らし合わせて、自身の知識・経験が役立っているということを実感できるようにしてほしいと思います。
- 秋吉
- 当社グループには、ホームマーケットに愛着を持ち、地域に貢献しようという意欲の高い人財が多く在籍しています。こうした人財は自己実現ができるということを期待して当社グループに加わっています。自己実現ができる場の提供が重要であり、その重要性は以前よりも高まっていると考えています。
長期ビジョンの実現に向けた、グループ戦略に基づく戦略的投資・提携
戦略的投資・提携の検討にあたり重視している点をお聞かせください。
- 秋吉
- 重視している点は2つです。1点目は、その案件が当社グループの戦略に沿ったものという点です。2025年度は収締役会でさまざまな案件について議論をおこないましたが、いずれの案件についても戦略に沿ったものであったと評価しています。2点目は、利益を買う投資ではなく、お互いの企業価値を向上させる投資であるという点です。ベースケースの達成だけでは意味がなく、投資後のPMIをいかに機能させ、お互いをバリューアップできるかという点を意識して、深い議論をおこなっています。

- 石井
- L&Fアセットファイナンスについて検討している際、「なぜ、このビジネスを銀行ではできないのか」という根本的な問いについて、非常に深い議論をおこなうことができたということが強く印象に残っています。意見を述べる際には、当社グループの戦略との整合性と、お客さまや株主へのインパクトを主視するようにしています。
- 依田
- 当社グループにフィットするかという点を重視しています。定性面では戦略とフィットしているか、PMIは円滑に進むのか、そして、定量面では引き受けられる大きさのリスクなのか、リスクに見合ったリターンを生むのかという点を意識しています。日頃から事業ポートフォリオ全体を俯瞰して捉え、各事業が役割を果たしているかをモニタリングする習慣を持つことが、投資・撤退の双方の点において、良い議論の土台になると考えています。
ステークホルダーの皆さまへ
最後に、ステークホルダーの皆さまへメッセージをお寄せください。
- 依田
- 「地域に根ざし、ともに歩む存在として選ばれるソリューション・カンパニー」という長期的にめざす姿の実現に向け、ふさわしい事業ポートフォリオを作れるよう、ガバナンスの役割を果たしてまいります。
- 石井
- 当社グループに関わるすべてのステークホルダーの期待に応えられるよう、グループ一丸となって前進していきます。引き続き、変わらぬご支援をよろしくお願いいたします。
- 秋吉
- トップ地域金融グループとしての矜持と誇りを持ち、さらに磨きをかけてまいります。成長余地が大きいという点をステークホルダーの皆さまにしっかりとお伝えし、当社グループの今後の発展と成長に大いにご期待を頂きたいと思います。
退任社外取締役メッセージ
2019年より社外取締役として7年間在任し、2026年6月の株主総会をもって退任いたしました。長い間お世話になり、ありがとうございました。
7年の間には、3人の社長と仕事をする機会があり、当社の商号も横浜フィナンシャルグループに変わりました。また、2回の中期経営計画策定に携わるなど、大変チャレンジングな活動時間でありました。
この期間には、2020年にコロナウイルスによって人々の活動や経済が停滞、2022年にはロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の大幅な上昇、そして2026年にはアメリカとイランの紛争が発生するなど、地政学リスクによって、経営環境と地域経済は多大な影響を受けました。地域の活動が途切れないよう、資金供給を継続することを中心に地域金融機関としての責任を果たすべく、取締役会の議論において社外取締役として細心の注意を払って対応いたしました。

特に記憶に残っているのは、成長戦略に沿って実行した「神奈川銀行」と「L&Fアセットファイナンス」への投資です。銀行とノンバンクという事業内容の異なる両社への投資ですが、それまでの当社グループにはない、地域経済に必要な機能を有しており、当社グループにおける相乗効果が今後も期待されます。
このように経営環境は目まぐるしく変化してきましたが、中期経営計画でめざすビジョンの実現に向けて、当社グループ一丸となって取り組んだ結果、日本経済が金利のある状態に変化したことも追い風に、株価は2026年3月末時点で1,374円と、7年間で約3.2倍になりました。また、時価総額についても1兆円を超え、2兆円に迫る状況にまで成長することができたと評価しています。
当社グループの魅力は、神奈川・東京という好立地に地盤を有しているということ、地元のお客さまを従業員たちに恵まれているということ、そして磨き上げたソリューション提供力です。今後、当社グループがさらに成長・発展し、企業価値を向上させていくためには、競争が厳しいホームマーケットでプレゼンスを一層深化させなければなりません。そして、それを実現するためには、人財のレベルアップと足りない機能の獲得が必要です。十分な資本を有効に活用し、デジタル・AIへの投資やM&Aによる足りない機能の獲得、そして何より人財への投資を充実させることが望まれます。
このように横浜フィナンシャルグループには伸びしろがたくさんあります。あとは実行とスピードです。ステークホルダーの皆さまには益々の発展を期待していただきたいとお願い申し上げます。