トップコミットメント
「横浜フィナンシャルグループ」に商号変更
地域とともに歩む新たな未来
横浜銀行と東日本銀行が経営統合したのは、私がコルディア・フィナンシャルグループの代表取締役社長に就任する6年前、2016年のことです。社名にラテン語で「調和・協調」を意味する「コンコルディア」を採用したのは、異なる企業文化を持つ両行が融合をめざす決意の表れでした。
経営統合から9年が経ち、グループとしての一体感は醸成されてきました。しかし、「現社名からは地域金融機関グループらしさが伝わらない」といった声を、多くの株主・投資家の皆さまやお客さまからいただいてきました。こうしたご意見を受け止め、2025年10月1日に「横浜フィナンシャルグループ」へ商号を変更することにしました。
新社名を「横浜フィナンシャルグループ」とした理由は3つあります。第一に、グループの事業ポートフォリオにおいて横浜銀行が大きな比重を占めているため。第二に、「横浜」という都市が持つ国際性、多様性、地域ブランド力を活かすため。第三に、銀行を中核とし多様な金融サービスを提供する「金融グループ」として新たな成長をめざす意思を示すためです。
商号変更については、株主・投資家の皆さまやお客さま、従業員からも好意的に受け止めていただいています。今回の商号変更は、これまでの融合を経て、当社がさらなる成長と価値創造をめざす新たな一歩です。「横浜」という強い地域ブランドを新社名に掲げることで、これまで以上に横浜を中心とした神奈川・東京エリアのホームマーケットへ貢献し続けていく決意を株主・投資家の皆さま、お客さま、従業員にしっかりとお伝えしていきます。
成長機会とリスク
変化する事業環境に挑む
私たちのホームマーケットである神奈川県・東京都には、多くの法人・個人のお客さまがいらっしゃり、今後も成長余地は大きいと考えています。法人のお客さまにおいては、オーナー企業が多く、近年は事業承継に関するご相談が増えています。また、上場企業のお客さまには、東京証券取引所による上場基準の厳格化や政策保有株式の見直し要請など、資本政策の強化が求められています。これらの多様な課題に対して、当社が提供できるソリューションは幅広く、法人向けソリューションビジネスは今後も成長ドライバーになると考えています。
個人のお客さまにおいては、政府が「資産運用立国」を掲げるなか、2024年から新しいNISA制度がスタートし、投資や資産運用への関心が高まっています。こうした動きを受け、当社ではさまざまな資産運用商品を活用し、ライフステージに応じたきめ細やかなご提案や、相続・贈与といった将来設計のご相談に積極的にお応えすることで、お客さまとの長期的な信頼関係の構築に努めています。
加えて、近年は持続可能な環境・社会づくりに対する意識の高まりなどにより、事業環境が大きく変化しています。当社は、サステナブルファイナンスなどを通じて社会課題の解決に取り組み、地域社会の持続的な発展に貢献するとともに、グループとしての持続的な成長をめざしています。
このように、私たちのホームマーケットには多様な成長機会が広がっています。一方で、事業環境にはさまざまなリスクも存在します。足元の懸念材料として、米国の関税政策などに代表されるグローバルな自由貿易体制の変化が挙げられます。この問題は自動車産業をはじめとした、多くのお客さまに影響を及ぼしかねません。
また、メガバンクや地方銀行のみならず、ネットバンクやフィンテック企業といった新たな競争相手の存在感が増していることも当社にとっての事業リスクの1つです。
さらには、金融機関の不祥事が相次ぐなか、社会からの信用の維持はこれまで以上に重要性を増しています。私自身、社内で繰り返し話していますが、社会からの信用を維持するためには、日々の業務において適度な緊張感を持つ企業風土の醸成が不可欠です。そのためには、組織としての健全なチェック体制の構築や、オープンにコミュニケーションできる環境整備が不可欠です。特に、マネジメント層が従業員一人ひとりに関心を持ち、積極的にコミュニケーションを深めていくことが重要だと考えています。
今後も、成長機会をしっかり捉えるとともに、リスクに正面から向き合い、時代の変化に柔軟かつ果断に対応し、持続的な成長と価値創造をめざして挑戦を続けていきます。
前中期経営計画の成果と課題
さらなる成長に向けて
2022年度からスタートした前中期経営計画では、「Growth」「Change」「Sustainability」の3つを基本テーマとして掲げ、テーマごとに取り組みを進めてきました。ここで、その成果と今後に向けた課題についてご説明します。
まず「Growth」については、ソリューションビジネスの深化・拡大に注力してきました。その結果、ソリューションビジネスによる収益は大きく増加し、当社の業績を力
強く牽引するまでに成長したと評価しています。
そして戦略的投資においては、2023年に神奈川県を地盤とする神奈川銀行を子会社化し、神奈川県を「面」として捉えた営業体制の構築に取り組んできました。これにより、地域密着型のソリューションビジネスをより多くのお客さまに提供できるようになりました。さらに、2025年4月には三井住友信託銀行から三井住友トラスト・ローン&ファイナンス(現L&Fアセットファイナンス)の株式を取得し、連結子会社化しました。これにより銀行の審査スキル、ノウハウだけでは対応が難しかった分野にグループとして進出することができ、企業価値向上につながる戦略的な資本活用が実現できたと考えています。
「Change」については、人的資本投資と店舗・店頭の効率化を進めてきました。2023年4月に「グループ人財戦略」を策定し、「人づくり」「組織づくり」「環境づくり」を柱に、さまざまな施策に取り組んでいます。また、店舗の在り方の見直しや集約、店頭業務のオペレーション改革など、多角的な取り組みを通じて、生産性向上や効率化に一定の成果を上げることができました。
「Sustainability」については、サステナブルファイナンスや環境分野ファイナンスの推進に加え、お客さまの気候変動対策ニーズの高まりにも後押しされ、GHG(温室効果ガス)排出量可視化プラットフォームの導入支援や、脱炭素事業性評価の実施など、地域の中で脱炭素への働きかけも積極的におこなってきました。
さらに、私たち自身が主体となり、自治体などと連携して地域の脱炭素推進に貢献するための地域脱炭素プラットフォームを設立できたことも、大きな成果の1つです。地域経済や地域社会のサステナビリティに貢献するとともに、当社のサステナビリティ経営の高度化に向けた取り組みを着実に進めています。
総合的に見ると、「Growth」「Sustainability」では十分な成果が得られた一方、「Change」については取り組みを進めましたが、人財の育成がまだ十分ではない点が課題と感じています。さまざまな施策を実施したものの、人財育成は短期的には成果が出づらいため、長期的な視点で企業文化や環境の醸成に取り組む必要があります。収益拡大に向けた人財ポートフォリオの構築や営業人員数の増強はまだ道半ばであり、社外取締役からもさらなる生産性向上の推進も求められています。これらの成果と反省点を十分に踏まえ、2025年度から始まった新たな中期経営計画に反映させました。
10年後を見据えた新中期経営計画
ホームマーケットでの確固たる成長をめざして
「10年後にどのような企業でありたいか」。この問いに正面から向き合うため、私たちは全従業員を対象にアンケートを実施しました。これは、10年後も当社で働いている人たちの声を反映して進むべき姿を決めるべきだ、という強い思いがあったからです。
アンケートの結果、私たちの10年後のあるべき姿は「すべてのステークホルダーに支持される企業価値向上の実現」であるという共通認識に至りました。この認識を2025年度から2027年度の新中期経営計画策定の出発点とし、「10年後のあるべき姿」からバックキャストして戦略を策定しています。前回の中期経営計画で明らかになった課題も踏まえ、経営体制のさらなる強化に向けた重点戦略を打ち出しました。
また、アンケートを通じて、私たちの成長の軸はホームマーケットにある、という従業員の考えを改めて確認できました。社内外の取締役と議論を重ねるなかで、この認識は一層強固になりました。地域に根ざした事業基盤をさらに強化し、成長機会を確実に捉える姿勢こそが、企業価値の向上につながると考えています。

新中期経営計画では、前回の基本テーマである「Growth」と「Sustainability」を継承しつつ、「Change」を「Empowerment(強化)」へ刷新し、人的資本への投資と生産性向上をさらに推進する方針です。これまでの成果は継承し、課題が残った分野はさらに強化していきます。すべてのステークホルダーに支持される企業価値向上の実現のため、この3年間を「未来への飛躍につなげる3年間」と位置付け、計画を着実に実行していきます。

Growth
リレーションシップ・バンキングと
戦略的投資による成長加速
当社は、グループ全体の持続的な成長と企業価値の向上をめざし、ソリューションビジネスの深化・拡大に取り組んでいます。競争が激化するマーケット環境では、従業員一人ひとりが自らの役割を認識し、質の高いソリューションを提供することがこれまで以上に重要です。
ソリューションビジネスを進めていくうえで、何よりも大切なものはお客さまとの信頼関係であると、社長に就任して以来、改めて強く感じています。こうした意識から、新中期経営計画ではソリューションビジネスの重要項目として、「リレーションシップ・バンキング」という言葉をあえて掲げています。従来使われてきた概念ですが、変化の激しい現在においても、お客さまとの信頼関係を最優先する姿勢が、当社の持続的な成長に不可欠であると考えています。お客さまとの信頼関係を基盤に最適なソリューションを提供することで、「選ばれるソリューション・カンパニー」を実現していきます。
また、L&Fアセットファイナンスを連結子会社化したことによるシナジー効果にも大いに期待しています。同社は住宅ローンやアパートローン、不動産担保金融を中核事業とするノンバンクであり、これまで当社が十分に対応できていなかったニーズにもリーチできるようになります。新規のお客さまの獲得や既存のお客さまとの取引拡大が期待でき、グループ全体として金融機能が大きく向上すると考えています。
このような資本活用は、単なる事業領域の拡大にとどまらず、グループとして新たな収益源の獲得や事業ポートフォリオの多様化につながり、企業価値向上に貢献します。また、経営基盤の安定化や収益の持続的成長にも直結する経営戦略だと考えています。今後も、より選ばれる金融グループとなるため、戦略的投資の機会を積極的に追求していきます。
Empowerment
人財投資と生産性向上によるエンゲージメント向上
当社は、資金量や時価総額において地方銀行グループの中でもトップクラスの実績を誇っています。こうした定量的な指標でトップを維持することは、従業員の意識や自信を高め、人財の質の向上にもつながっていると感じています。しかし、真に「地銀トップバンク」となるためには、経営指標だけでなく「人財の質」においてもトップをめざすことが不可欠です。そのため、従業員のエンゲージメント向上も非常に重要なテーマと考えています。トップバンクの従業員としての誇りを持って働けるよう、エンゲージメントを高める環境づくりや人的資本への投資、生産性の向上が不可欠です。
営業戦略を支えるのは人財戦略です。人財の流動化が進む時代に合わせ、当社が求める人財像を明確にし、採用や育成の強化、ノウハウの体系化と効率的な育成の仕組みづくりを進めています。グループ全体で目標を達成するには、リーダーの育成も重要なポイントです。
また、エンゲージメントの向上は人財投資だけでは実現できません。特に生産性向上によって、リーダーがチームメンバーと積極的にコミュニケーションを取る時間と、お客さまとの関係構築に必要な時間を確保することが必要です。現場からは「時間が足りない」という声があがっており、ソリューションビジネスの強化においても、お客さまとの関係構築のための時間をいかに創出するかという点が課題となっています。例えば、従来は15分間しかお客さまと話せなかった従業員が、30分間や1時間かけてしっかりと話すことで、お客さまとの信頼が深まれば、それが従業員自身の自信やモチベーションにもつながります。
生産性向上のため、「生産性向上推進室」を立ち上げ、生産性向上プロジェクトをスタートしました。「やめる」「へらす」「かえる」をキーワードに、業務プロセスの抜本的な見直しを進めています。今後は、マネジメント層自らが意識改革をおこない、不要な業務の削減や見直しを積極的に推進していきます。これにより、従業員が力を発揮すべき分野にリソースを集中できる体制を整えていきます。
昨年度の統合報告書でもお伝えしましたが、当社は複雑化するお客さまの課題に応えるため、多様な人財が協働し、それぞれの意見やアイデアを活かす組織づくりを推進しています。ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DEI)への取り組みは、従業員一人ひとりが個性や能力を発揮し、さまざまな価値観から新たな価値を生み出すためにも不可欠だと考えています。
今年度は経営サイドが不要な業務を見極めて「やめる」と判断し、従業員が価値を生む業務に集中できる環境を整える「働かせ方改革」にも注力します。また、「メリハリのある働き方をしたい」、「新たな働き方に挑戦したい」といったさまざまなニーズや意欲に柔軟に応え、選択制を重視した多様な働き方を可能にする職場づくりを進めていきたいと考えています。
多様な価値観を持つ従業員が互いに認め合い協働することで、イノベーションが生まれると確信しています。当社が成長し続け、強い組織であり続けるためには、一人ひとりのエンゲージメント向上が不可欠です。私自身も引き続き従業員の声に耳を傾け、誰もがいきいきと活躍できる魅力的な組織をめざしていきます。
Sustainability
ガバナンス強化と地域社会への
価値提供による持続的成長の追求
私たちは「10年後のあるべき姿」として、他社に負けない高度な機能を備えた総合金融グループをめざしています。その実現に向けて、グループ全体のガバナンス体制の強化が不可欠です。
具体的な取り組みとして、2025年6月に監査等委員会設置会社へ移行しました。この移行は、執行と監督・監査の役割分担を明確にし、持株会社であるフィナンシャルグループ(FG)が管理・監督機能を担い、銀行などの子会社が執行機能を担う体制への転換を見据えたものです。現時点ではFGと横浜銀行との機能が重なる部分もありますが、今後、段階的にFGがグループ全体の執行機能を管理・監督する役割を強化していきます。加えて、社外取締役の比率を従来の37%から55%に引き上げ、意思決定の客観性と多様性を高め、ガバナンスの実効性も強化しています。
ガバナンスの強化とともに、当社の持続的な成長や地域社会の持続的な発展という観点から、「環境の保全・保護」をマテリアリティの1つとして掲げ、気候変動に対応した脱炭素社会の実現を推進しています。パリ協定の採択以降、世界各国・各地域において「1.5℃目標」の実現に向けた取り組みが進展するなか、GHG排出量の可視化や削減目標の設定、トランジションに向けたファイナンスのご提案など、お客さまと対話しながら取り組みを進めています。当社としても投融資ポートフォリオ全体で「2050年ネットゼロ(温室効果ガス排出量実質ゼロ)」をめざし、中間目標を設けて進捗を管理しています。
また、地域金融機関として、地域課題の解決を通じて地域の発展に貢献することも重要なミッションと認識しています。脱炭素や再生可能エネルギー事業、生物多様性保全への支援はもちろん、歴史や文化の継承、地域発イノベーションの創出支援も、サステナビリティの一環として当社が果たすべき役割だと考えています。
さらに、人権の尊重を企業の重要な責務と捉え、「グループ人権方針」を定め、差別やハラスメントを許さない、人権が守られる社会づくりに努めています。まずは、継続的に人権の啓発に取り組み、役職員だけでなく、ステークホルダーの皆さまに、私たちの「グループ人権方針」をご理解いただくとともに、救済窓口の設置やモニタリングの強化など人権課題に対する取り組みを進め、引き続き人権デュー・ディリジェンス体制の高度化をはかっていきます。
すべてのステークホルダーの期待に応える企業価値向上
ロジックツリーを基軸とした対話と価値創造
当社としての「企業価値」の定義はロジックツリーで明確に示していますが、ステークホルダーごとに当社に対する期待は異なります。そのため、それぞれの期待に応えられるよう、企業価値の向上に取り組んでいます。2023年には、PBRやROEなど企業価値に直結する指標の改善に向けて、このロジックツリーを公表し、企業価値向上のために何をすべきかを体系的に整理しました。現在では、社内外との対話においてもこのロジックツリーを“共通の物差し”として活用しています。
今後も、持続的な成長を通じて企業価値を高め、株主・投資家の皆さまへの利益還元や従業員の処遇改善につなげていきます。さらに、地域経済の発展を支え、お客さまや地域社会への貢献も実感いただけるよう努めていきます。
すべてのステークホルダーの期待に応える企業価値向上を実現することが、私の最大の役割であり、責任であると自負しています。非常に難しいことではありますが、この点は今後も追求し続けていく覚悟です。
ともに未来を築いていくため、引き続きご支援いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
