社外取締役座談会

「横浜」という先進的な地域に根ざした金融機関であること

片岡社長を中心とした経営体制になり3年が経過しました。前中期経営計画最終年度の昨年度は商号変更を発表したことも大きな話題となりました。経営体制に対する評価、商号変更へのご意見を聞かせてください。

秋吉
この1年を振り返ると、取締役会や経営会議における各執行側役員の積極性は年々高まってきたと評価しています。新中期経営計画の周知においても片岡社長自らが先頭に立ち、意図や内容について従業員と熱心にコミュニケーションを取っていた姿が印象に残っています。議論やコミュニケーションに対する積極的な姿勢は年を経るごとに強くなっている印象で、経営に対する従業員の理解も深まってきているのではないでしょうか。
商号変更については、2024年度に取締役会で満を持して議題となったことを意義深く受け止めました。コンコルディアという名前は、一般的には世間に広く認知されていると言い難く、地域を大事にする私たちの姿勢を明示するうえでも、「横浜」というブランド力のある名前を用いることに賛成です。お客さまにとっても分かりやすいと思いますし、早期に浸透するものと期待しています。
依田
取締役会では、株主構成の在り方についてしばしば議論してきました。地域金融機関として個人株主をもっと拡大したいという課題も以前からありました。今回の商号変更によって、「横浜」という先進的な地域に根ざした金融機関であることを端的に訴求できると思います。
また、執行と従業員との双方向のコミュニケーションが活発である点も、非常に評価しています。特に前中期経営計画期間において、ロジックツリーを活用して、企業価値向上への指針や具体的行動を社内外のステークホルダーに論理的に説明できたことは大きな成果です。

グループ経営を支えるサクセッションプランと報酬改革

経営幹部のサクセッションプラン(後継者育成計画)を含め、報酬・人事委員会での議論の様子を聞かせてください。

秋吉
2017年以降、役員報酬制度・水準を維持してきました が、昨年度見直しを実施しました。その狙いは大きく3つありま す。1つ目はメガバンクや大手地銀が制度・水準を見直すなか で、当社の水準がそれらと比較して劣っている状況になってい たため、地銀トップバンクとして遜色のない水準にすべきだとい うこと、2つ目は業績に対するインセンティブをより高めること、3つ目は評価方法をよりシンプルで分かりやすくすることです。
2024年度のサクセッションプランに関しては、24名の対象者と面談を実施し、評価の観点や育成方針について検討をおこないました。2025年度に向けても、対象者の選定や育成方法について議論を重ねています。また、片岡社長や子銀行の頭取とも連携し、今後の役員構成に関する方針について継続的に協議を進めています。
依田
報酬制度について、業界の中で遜色のない水準に見直すべきという点は、社外取締役からも積極的に意見を述べてきました。また、全社的にも会社の業績と個人のパフォーマンスをリンクさせ、自分事として捉えられる人財を増やしていくことは、重要なミッションです。グループの主要な子会社である横浜銀行で、一定の要件を満たす幹部従業員に対し、自社株式による報酬制度を導入したのもその一環です。業績に対して従業員が自分事として考えられる仕組みづくりをどう進めていくべきか、今後も議論をしていきたいと考えています。

石井さんはこれまで横浜銀行の社外取締役として経営に携わってこられました。今回、当社の社外取締役として経営に参画されます。どのように経営に関わっていくお考えですか。

石井
横浜銀行と当社は、取締役会を一体運営しており、これまでグループ経営を間近で見てきました。私は社外取締役として、企業価値向上をめざすうえで、グループが適切なリスクテイクをおこなうようにサポートしていきたいと考えています。幸いなことに私は銀行と証券、保険の3分野で経営に関与した経験があり、機能を拡大していく当社の成長に貢献していきたいと思っています。
グループ経営を間近で見てきた立場から感じることは、企業文化がグループ全体で徐々に変わってきているということです。ロジックツリーを通じた対話が広がり、従業員にも企業価値向上に対する意識が浸透しています。その結果として従業員持株会の加入比率が高まっているという効果が表れていると認識しています。

従業員の意見も反映させた「10年後のあるべき姿」の実現に向けて

前中期経営計画は、「変革を加速し成果を具現化する3年間」と位置付けていました。これまでを振り返り、どのように評価していますか。

秋吉
ソリューションビジネスの深化・拡大は収益増加につながり、ソリューションビジネスを担う人財の育成などの人的資本投資も順調にできていると思います。その結果は業績にも表れています。神奈川銀行やL&Fアセットファイナンスが象徴するように、成長につながる資本活用も着実に進みました。一方で本部や事務を担う従業員の営業へのシフトなどによる営業人員の確保は道半ばだと認識しています。人財の育成と収益力の強化は表裏一体の関係にあります。「金利のある世界」では、良質なアセットをいかに拡大していくかが命題として問われます。お客さまと向き合う質の高い人財の確保は、良質なアセットおよび収益の拡大につながると考えています。
依田
私も同様の印象です。「ソリューション・カンパニー」や「地域に根ざし」、「選ばれる」といった長期的にめざす姿を明確に言語化し、方向性を共有できたことで、めざす姿の実現に向けてしっかりと舵を切ることができました。人財の育成や確保は長期的視点で取り組むべきもので、人事制度の見直しなどは着実に進んでいますが、継続的な課題だと認識しています。

新中期経営計画はバックキャスト思考で検討され、「未来への飛躍につなげる3年間」と位置付けています。取締役会ではどのような議論がされたのですか。

秋吉
3年間だけを考えてしまうとできることも限られてきます。まずは地域に貢献できる総合金融グループとして「10年後のあるべき姿」を描き、実現に向けた最初の3年間の計画を段階的に議論し、着実な成長戦略を新中期経営計画に盛り込むことができました。納得できる内容に仕上がったと評価しています。
依田
プロセスに関しては、今回も新中期経営計画を検討する際に従業員へのアンケートを実施し、9割近くの従業員が回答しました。自分たちの強みについて、経営サイドも従業員も再認識する機会になりましたし、営業現場の従業員がお客さまとの関係を非常に重視していることが改めてわかりました。成長するために一定のリスクを取ることに対する設問において、多くの従業員が肯定的に捉えていたことも印象に残っています。
秋吉
アンケートの回答からは、優良なお客さまとたくさんのお取引をいただいていると認識している従業員が多くいることが示され、改めて私たちが基盤とするマーケットの強さと当社の優位性を感じています。ただ、競争が激しい地域であるだけに、他の地銀と比べると融資や預金のシェアは必ずしも高くはありません。逆に言えば、成長余地はまだまだあるわけで、経営サイドが今後の成長に向けた具体的な施策を検討し、実行に移していく必要があると考えています。

リレーションシップ・バンキングと人財育成で築く地域金融の未来

新中期経営計画では「リレーションシップ・バンキング」という言葉が強調されています。リレーションの強化をめぐって、どのような議論がありましたか。

秋吉
質の高いアセットを拡大していくためにも、私たちの最大のお客さまである中小企業の皆さまが、どういった経営課題に向き合いながらどのように成長していきたいと考えているのかを理解しなければなりません。理解の前提には対話があり、リレーションは不可欠な要素です。加えて、私たちが相当質の高い提案をしないとお客さまの満足も得られません。ソリューションビジネスの深化・拡大につなげるためリレーションシップ・バンキングを強化するべきと再度整理しました。
依田
当社の従業員が、お客さまから信頼され、相談を受けるにふさわしい専門性を備えた人財であることが求められます。そのためには的確なアドバイスやコンサルティングを提供できるレベルの人財を育成していくことが不可欠です。
石井
ソリューションとリレーションは表裏一体の関係です。お客さまと伴走した結果、お客さまの企業価値が向上し、私たちの発展や従業員の成長にも結びつくといったwin-winの関係構築が理想だと思います。

必要な人財を獲得して育成していくにあたり、強化策を聞かせてください。

依田
人員不足は業種を問わず日本で共通する課題です。特に専門人財は獲得競争になりがちで知識を身に付けた後も当社で働き続けたいと思える企業になっていくことが大切です。加えて、営業店などの営業現場で若手従業員の割合も増えており、育成の仕方も工夫が求められます。管理職も多忙な状況にあるなかで、時間を捻出する全社的な仕組みづくりが求められます。お客さまと質の高いお話をするためにも、業務の効率化を一層進めていくべきです。
石井
人件費はコストではなく「投資」であるという意識を今以上に持つべきです。報酬も大切ですが、働きがいも同様に重要です。業務に必要なスキルを明確にし、リスキリングも含めて従業員一人ひとりがモチベーション高く働ける環境を整えるよう支援していきたいと考えています。目標達成のためには各人の持つ多様なスキルを活用していく必要があります。全員がオールマイティーになる必要はありません。「めざすポジションに必要なスキル」や「キャリアのロードマップ」を可視化することで、従業員が自身の目標を持ちやすくなるのではないでしょうか。いずれは役員だけでなく、全従業員のスキルや希望も可視化し、それをもとに最適なチームビルディングにつなげていけるといいのではないかと考えています。多様化する働き方やキャリア形成に対応するためにも、目標となる姿や進むべき道を明確に示すことが重要です。見えていなければめざすこともできません。
秋吉
お二人のお話のとおりだと思います。従業員の声を聞くと、若手従業員から管理職まで皆さん相当に忙しい様子が伝わってきます。皆が非常に忙しい状況で、お互いに声をかけづらい環境になっていると感じます。こうした状況では心理的安全性が損なわれやすく、また、上司が疲弊していると、若手も「リーダーになりたい」と思えなくなってしまいます。若手の育成と同時にマネジメント層の育成にも力を入れる必要があると感じています。部下にとって上司は、「こうなりたい」とめざすロールモデルの1つであるべきです。そういう組織となっていければ、組織としてもう一段高いところをめざしていけると考えています。
依田
多様性を受け入れ、それをマネジメントできる組織でなければ、人財の獲得競争には勝てません。女性活躍推進のための「TSUBAKI」プロジェクトを3年ほど続けていますが、その内容が有意義であるため、最近では「男性従業員も参加できるようにした方がよいのでは」といった意見も出るようになりました。実際、真に多様性を活かす組織づくりのためには、性別に関わらずすべての従業員が自らのキャリアや働き方について主体的に考え、行動することが不可欠です。私はリーダーシップには二つの側面があると考えています。1つはグループを率いるリーダーシップ、もう1つは自らの職業人生をどうリードしていくかというリーダーシップです。個々人が自立した職業人であることがこれまで以上に求められ、セルフマネジメントの重要性が高まっていると感じます。
秋吉
地域金融機関で働く以上、地域を発展させたいという思いを持つ従業員が多いと思います。そうした思いを実現できる組織であることを、従業員やこれから入社を考える人たちにしっかりと示していくことが、働き手のモチベーション向上にもつながるはずです。そのために何をする必要があるのかを認識し、一つひとつ着実に実施していくことが重要です。それが結果として優秀な人財を引き寄せる力にもなると考えています。

新たな成長戦略とガバナンス強化で総合金融グループの未来を育てる

戦略的投資として三井住友トラスト・ローン&ファイナンスの株式を取得し、社名変更を実施してL&Fアセットファイナンスがグループに誕生しました。意見交換の場ではどのような議論がなされましたか。

秋吉
なぜこの会社が必要なのか、銀行本体では提供できないサービスなのかといった議論を何度も繰り返しました。その結果、銀行など一般の金融機関では対応が難しい案件も受け入れ可能な不動産担保融資を専門とするビジネスであることがわかりました。銀行にはノウハウがない分、シナジーが期待でき、グループ全体として大きな成長を生みだせると考えています。
依田
私も同感です。ビジネスの専門性と特殊性から、グループのアセットクラス別RORAで見ても特異なリスクアセットと言える存在であり、事業ポートフォリオの幅が広がりました。
石井
各銀行のビジネスにとっても大きなプラスをもたらすと考えています。議論をするなかで私たちがめざすソリューションビジネスの整合性について確認する機会にもなりましたし、今回の案件はさらなるソリューションビジネスの深化・拡大につながると感じています。地域社会の課題解決の手段としても有効に活用できると評価しています。

ガバナンスの高度化に向けて、監査等委員会設置会社への移行も実現されています。こちらについてはどのような議論がされたのでしょうか。また、さらなるガバナンス強化への課題があればあわせて教えてください。

秋吉
これまでのマネジメント型でも十分なガバナンス体制は構築できていたと思いますが、総合金融グループとして銀行以外の機能が加わっていくことも見据える必要があります。監査等委員会設置会社への移行はその準備の一環です。いきなりモニタリング型に変わるわけではありませんが、段階的に進めておくべきであり、今回の移行はよいタイミングだったと考えています。
依田
監査等委員会設置会社への移行は急に決まったものではありません。適切なガバナンス体制については、取締役会で毎年議論を続けています。段階的にモニタリング機能を強化していく必要があると認識しています。
石井
以前の体制に問題があったわけではありませんが、今回の移行はガバナンスを進化させるための1つの選択肢です。これまでの良さを活かしつつ、次のステップに進む過程として、まずは監査等委員会設置会社への移行から始めたのは妥当だと考えています。

最後にステークホルダーの皆さまにメッセージをお寄せください。

秋吉
私たちの最大のミッションは、企業価値の向上とともに、地域経済の発展に貢献することです。現状は銀行が主体となった金融グループですが、お客さまに提供できる金融サービスやソリューション機能をさらに充実させ、総合金融グループとして、ステークホルダーの皆さまとともに発展していきたいと考えています。
依田
「地域に根ざし、ともに歩む存在として選ばれるソリューション・カンパニー」という長期的にめざす姿が明確ですので、そこに向けて引き続き努力していきたいと思います。10月には横浜フィナンシャルグループへ社名も変わります。より親しみやすい存在となり、地域の発展に貢献していきたいと考えています。
石井
地域の力を高めることは、当社の使命です。従業員一人ひとりが成長し、自己実現を果たすことが、最終的には地域社会全体の発展や豊かさにつながります。地域の皆さまと一体となって、すべてのステークホルダーが恩恵を受けられる好循環を生み出していきたいと考えています。